『ユナイテッド・アボニネーションズ 』メガデスがいよいよバンドとしての勢いを取り戻してきた

本記事はプロモーションを含みます。

どうもSimackyです。

本日は2007年にリリースされたメガデスの11作目のオリジナルアルバム『ユナイテッド・アボニネーションズ』を語っていきたいと思います。

運命がすでにロックな大佐

1980~90年代に名作の数々を生み出したメガデスですけど、2000年代のメガデスって微妙な作品と解散で始まったんで、あんまり注目されていないかもしれませんけどね。

実は2000年代のメガデスはすごかったってことをどれだけの人が知っているんでしょうか?

皆が「メガデスは終わった…」と思っている時期に彼らは大躍進を遂げているんですから。

2001年『ワールド・ニーズ・ア・ヒーロー』2004年『システム・ハズ・フェイルド』2007年本作、そして2009年に完全復活とも言われる『エンドゲーム』と順調に4作をリリースしているんですよ

これって実は1990年代と変わらないペース。

解散があったのにもかかわらずこれってすごくないですか?

1990年代はメガデスがオルタナムーブメントを乗り切るために歌モノ4部作に方向性を変えた期間がすっぽり入ってます。

イコール黄金期メンバーの時代です。

2000年~2010年の10年間は解散前の最悪の時期から始まったのですが、信じられないような成長を遂げます。

1961年生まれの大佐は39歳から49歳という時期ですね。

つまり40代ですよ。

よく考えてみてください。

40代の10年間の時期にですよ?

ドン底から始まって『完全復活の傑作』とまで言われる作品を生み出して終わる…

そんな芸当をやってのけるミュージシャンなんていましたっけ?

そもそも長年音楽業界に携わったベテランミュージシャンが、40歳でドン底のキャリアに陥るということがなかなかに前例がないと思うのですが(笑)。

大御所バンドであるほど、普通は日和ってます。

ストーンズで言えば1983年~1993年が彼ら(ミックとキース)の40代にあたりますが、彼らがその期間に「めっちゃ成長したねぇ~」って言えるような感じでした?

ミックとキースが険悪になってバンド解散寸前からの仲直り…とお家騒動してただけじゃないですか!(笑)。

ストーンズの歴史ではほとんど顧みられることのない作品群を作っていた時期ですよ。

そうですね…私の記憶では唯一デビッド・ボウイが近いかな、と。

ボウイ史上最低評価の作品が1987年(40歳)『ネヴァー・レット・ミー・ダウン』で、その後、ティン・マシーンというバンドを作ってさらに迷走をカマします。

ティン・マシーンでの来日の際に出演した夕方の番組『鶴ちゃんのプッツン5』で「日本には金儲けのために来ているんですか?」みたいな舐めきった質問をされた時、「デビッド・ボウイは終わった」と感じた人も多かったはず。

迷走の極地ですね。

が、復活作と言われる1993年(46歳)『ブラック・タイ・ホワイト・ノイズ』から調子を上げていき、1995年(48歳)にマニアの間では最高傑作とも言われるコンセプトアルバムの大作『アウトサイド』を作ってます。

おお~、大佐とボウイの意外な共通点を見つけてしまいました。

でも確かに似ているのかも。

両者とも守りに入らないというか、いつもゼロからのスタートをしている様がそっくりというか。

男前でカリスマ的人気を誇るのに、たまにみっともないくらい無様な状況に陥りますもんね(笑)。

にしても2000年代のメガデスの始まり方は「厄年か?」というほどひどい始まり方。

アルバムは売れないわ、バンドは解散するわ、腕は動かねぇわ、ドラッグ・アルコールに蝕まれるわ、相棒に訴えられるわ…。

厄年ってこんなにひどい目に合うものなの?

大佐はおそらく普段のバイオリズムの浮き沈みが一般人とは違うんだと思います。

ある時は信じられないくらいの絶頂、そしてある時は信じられないくらいのドン底。

2016年に『ディストピア』でグラミー賞を取ったかと思えば、2019年には咽頭がんになってしまうということからも、そういう運命のもとに生まれているのでしょう。

今となってはガンを克服できたからこんな話も気楽にできるわけですが。

まあ、破天荒にドラマティックに生きてらっしゃいますよ。

起死回生のヒット作

前2作はバンドの内情もさることながら、セールス的にもパッとしませんでした。

「ワールド・ニーズ・ア・ヒーロー」全米16位、「システム・ハズ・フェイルド」18位ですね(それでもトップ20位圏内にいることはさすが)。

しかし本作は8位とトップ10入りを果たしたんです。

これはメガデスの2000年から現在までの作品の中でもグラミー受賞『ディストピア』3位に次ぐ成績で、一時は最前線から脱落したかに見えたメガデスが、シーンの最前線に戻ってきたことを印象付けた出来事でした。

作品の充実ぶりという点では、前作から復活の兆しが見えてきていたので、期待に胸を膨らませて待っていたファンも多かったことでしょう。

そんなファンの期待と予想を超えてきたのが本作ではないでしょうか?

まさか全盛期の輝きをここまで取り戻してくるとは!

私も初めて聴いた時にかなり驚いたのを覚えています。

『ユナイテッド・アボニネーションズ』楽曲レビュー

私は個人的には次作の『エンドゲーム』が2000年代の最高傑作だと思っているのですが、こうして本作を聞き返してみるとどうしてどうして、素晴らしっすね(笑)。

疾走パートが前作よりもさらに増えている印象があるのですが、そういうことじゃなく耳に残るフレーズが多いので快感指数が高く、また歌モノとして聴けるアルバムでもあります。

冒頭のインパクトはすごいのですが、中盤#3~7が若干弱いため、ここが次作に及ばないところなんですよね。

惜しい。

それからこれはドラム好きな人しか興味ない話かもしれませんが、今回のショーン・ドローヴァのドラミングはやたらめったらと気持ちいいです。

実は今回はピンク・フロイドのデビッド・ギルモアが所有するスタジオを利用しているのですが、ここになんと、レッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムのドラムセットがあったとのことで、ショーンはそれを使ってます。

これね、ドラマーとしたら鼻血が出るほど興奮する出来事ですよ(笑)。

あのドラムの神様ボンゾのドラムですよ?

私だったらわざとミステイクを重ねて「いい加減にしろ!」って怒られるまでエンドレスで叩き続けるでしょうね(笑)。

ショーンの張り切りようが伝わってくるというものですよ。

ちなみに日本版ボーナストラックにツェップのカバーである『アウト・オン・ザ・タイルズ』が収録されているのはこのためなんですね~。

出来?

めちゃめちゃかっこいいです!

ボンゾの音!

私もこれ聴いて血が騒いできてスタジオで叩きたくなってきました(笑)。

ぜひ聴いてみてほしい。

サバスの『パラノイド』『ネバー・セイ・ダイ』をカバーした時もそうですが、メガデスはメタリカと同じくカバーのセンスが非常に高いですね。

それでは私のおすすめ楽曲を紹介しましょう。

#1『スリープウォーカー』

来ましたね~。

本作を代表するだけでなく2000年代メガデスの中でも屈指の名曲だと思ってます。

のっけからのリフの音が完全にメガデスの音になってて「メガデスが戻ってきた」感が半端ないです。

3:20からガラッと展開が変わるところでのリフは、まさにかつての「マシーン」そのもの。

無機質で無慈悲に襲いかかってくるこの冷徹さが最高に痺れます。

「え!こういうフレーズまだ生み出せるんだ!」

と驚かされた人は多いでしょう。

#2『ワシントン・イズ・ネクスト! 』

集中力と緊迫感が途切れませんね。

このテンションの高さは何事でしょう。

ひたすらダウンピッキングで引き倒すリフが強烈にスラッシュメタルを印象付けます。

小きざみに刻まれるショーンのツーバスがゾクゾク感を煽ってきますね。

これまた名曲!

#8『ア・トゥー・ル・モンド』

まさか『ユースアネイジア』からのバラードを持ってくるとは、こんな変則的な選曲はメガデスならではです。

今回はラクーナコイルというバンドからボーカリスト借りてきてコラボしてます。

とくに劇的に良くなっているわけではないですが、もとが名曲なだけにやっぱりいいですね。

『ユースアネイジア』はメガデスの全カタログの中でも異色のカラーを放ってるだけに、こうした女性ボーカルもはまりますね。

#9『アメリカスタン』

のっけから大佐のボーカルに驚かされます。

これはポエトリーリーディングになるのか?

ラップになるのか?

しかし、これは『破滅へのカウントダウン』収録の「スウェッティング・ブレッツ 」でやった歌い方に近いとも言えます。

とにかくかっこいいのでもっとやってもらいたいくらいですね。

リフのメロディが秀逸で一発で耳に残ります。

機械みたいなジャストなリズムのドラムが安定感あるな~。

本作はアルバムを通してこの「ジャストのリズム」が生み出すグルーブ感が気持ちいいので注意して聴いてみてください。

#10『ユーアー・デッド』

ダークでヘヴィなグルーブ感が病みつきになります。

これは中毒性高いな。

メガデスがここまで重さを前面に出してくるのって実はそんなに多くないですよね。

なんかマシーン・ヘッドっぽい。

#11『バーント・アイス』

デビリッシュな雰囲気でアルバム最後を締めます。

大佐のボーカルがこの雰囲気に見事にハマっていいですね~。

ドラムのタム回しが重低音効いてて迫力あります。

とにかくグレン・ドローヴァが全編に渡って弾きまくり。

怒涛のラストはアクセル全開なのですが、いや~バカっぱやなギターソロです。

 

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