『ウルトラメガOK』サウンドガーデン グランジ界の重鎮のデビュー作
本記事はプロモーションを含みます。
どうもSimackyです。
先日、私の大好きなグランジ/オルタナティブバンド、アリス・イン・チェインズをたっぷり語り終えて、もう十分満足しましたので(笑)、本日からはサウンドガーデンを語っていきますよ~。
これまた大好きなバンドですね。
アリスとどっちが好きかと言われると、「断然アリス!」だと自分では思っていたし、そりゃ好きなアルバムの枚数だって段違いです。
ですが、こうしてあらためて聞き返してみると当時10~20代の興奮が蘇ってきますね。
「俺、サウンドガーデンめっちゃ好きだったんじゃん」と(笑)。
そうなるのも道理で、はっきり言ってこの人たちって
魅力が分かりにくい。
人に魅力を伝えるのも難しいんですけど、そもそも自分が彼らを好きな理由を自分で理解できていない。
それで記事書こうなんて、すでに致命傷じゃねぇか(笑)。
この人たちの場合、メロディとか理屈云々じゃなくて、本能に刷り込まれる魅力というか。
そりゃメロディで言うならば圧倒的にニルヴァーナやアリスの方が良いはずなんですよ、ビートルズに例えられるくらいだし。
私も当然そっちが好きなはずなんですよ。
けど、意識下では「よく分かんない」と思いきや、無意識下では「もっとこれが欲しい」って欲するみたいな(笑)。
いや、こういうのを本当の中毒性っていうんじゃないんですかね?
どうしてこういうことになるかというと、彼らの音楽的なバックボーンが膨大に広いため様々な音楽要素がごちゃ混ぜになっていること、そしてミュージシャンとしての技量がピカイチということが挙げられます。
良く言えば『本格派・実力派バンド』ということになるのでしょうが、悪く言えば『マニアック』で『玄人くさい』んですよ。
イチ音楽リスナーとしても玄人だし、プレイヤーとしても玄人。
きっと「そんなものどこで手に入れたの?」っていうくらいマニアックな音楽を聴いてるはずです。
なぜなら、彼らの音楽を聞いているとルーツが分からないことが多いからです(分かるのはサバスとZEPぐらい:笑)。
そして、「他の人がやったことないプレイをとことん突き詰めるぞ!」って感じで練習してると思います。
「それバンドでバシッと合わせられるまでに、どんだけの練習したんだ?」
っていうプレイがかなり多い(変則的リズムの多用)。
私がバンドとしてコピーした中では一番難しかったです、サウンドガーデンは。
譜面上は完コピ出来てるはずなのに、どうしてもこんなかっこいいグルーブになんない。
で、物凄くキャッチーで普遍性のあるメロディがたまに顔を出す。
「え!?出来たの?」
みたいな(笑)。
でも出来るくせに、そこで勝負すれば簡単に売れることもできるはずなのに、あえてそれはしない。
分かりやすいメロディを全部は出さない。
「欲しいものをくれない」小出しにされる感覚。
ひねくれてるんですよ(笑)。
というより、その方が最終的な快感が増すってことを知っているのか?
まるで女を焦らしているみたいな(笑)。
「お前たちがすぐに分かるようなもの作ったってつまんないじゃん」
って言われてるような。
で、圧倒的な演奏技術が生み出すグルーブで煙(けむ)に巻かれる、みたいな。
どうです?
一癖も二癖もありそうでしょ?(笑)
そうなんです、彼らはニルヴァーナやアリスよりも
曲者っぷりが一枚上手
なんですから。
カート・コバーンがサウンドガーデンを評して
「こんな奴等にかなうわけがない」
って言ったのは、誇張でもリップサービスでも何でもないですからね?
本音だと思いますよ。
こんな奴らが同世代にいたら、同じミュージシャンとして嫌だろうな~(笑)。
こいつらマジもんです。
油断してると手の平の上で転がされます。
ニルヴァーナやアリスが『ビートルズ』に例えられることはあっても、サウンドガーデンは絶対ないですね。
彼ら(ニルとアリ)ほどには、欲しいものをすぐにくれないから。
その意味じゃあZEP(レッド・ツェッペリン)っぽいというか。
そのくせ、その気になれば1000万枚セールスとかやっちゃうんだから、その実力は底が知れません。
『売れるか売れないか』さえ、自分たちでコントロールしているフシさえある。
その意味じゃあ、デビッド・ボウイっぽいとも言えます。
いや、マネジメント・スキルではデビッド・ボウイ以上かも。
だってデビッド・ボウイでさえ、『レッツ・ダンス』で1000万枚売れた時は、その後に迷走してしまったというのに。

『レッツ・ダンス』1983年
この人たちは最後まで迷走せず、我が道を歩んでました。
『グランジ』って音楽的に定義しようとしても、パンクっぽいバンドもメタルっぽいバンドも混在しているので実は難しいのですが、精神的な意味での『グランジ』、すなわち『アンチ・ロックスター』としての意味で言えば、この人たちこそ真のグランジと言えるでしょう。
サウンドガーデンの売れ方って、ミュージシャンとしては理想的なんですよ?
徐々に売れていく。
売れているにも関わらず、カリスマ性は保ちながら、音楽的には自由が許される状態をキープし続ける。
1000万枚売った頃にはある程度大人になってるから、環境の変化にも振り回されず、クレバーに演りたいことだけを演る。
決してロックスターやセレブを気取ったりしない。
普通『スーパーアンノウン』みたいなヒット作品を作ったら、それがプレッシャーになったり、同じような作風を求める周囲の声に縛られそうなものなのに。

4作目『スーパーアンノウン』1994年
やりたい放題の次作(『ダウン・オン・ジ・アップサイド』)を発表し、

5作目『ダウン・オン・ジ・アプサイド』1996年
「うし!これでやりたいことやりきった。バイバイ♪」
って解散しちゃうんですよ!?
いきなり!?
バンドメンバーの誰が死んだわけでも(ニルヴァーナ)、ジャンキーになった(アリス)わけでもないのに!
自由すぎだろ。
これって四天王って言われるニルヴァーナ、アリス、パール・ジャムの誰も出来なかったことですよ。
彼らは大なり小なりファンの求めるものに色んな意味で縛られてしまいましたけど、サウンドガーデンはそれがまったく感じられません。
手が付けられないほどのヒットを飛ばして、がんじがらめになるような事態をうまく避けている。
けどここまでの話は、全て私が深読みし過ぎなだけで、実は単にクリス・コーネルが“天然”なだけかもしれない。
未だにそこのとこが分かんないんだな~、
『超大物』なのか『ド天然』なのかが(笑)。
そんな超曲者バンドのサウンドガーデンを語り尽くすことで、自分にとっても彼らがどんな存在だったのか?が見えてくることと思います。
さあ、私と一緒にサウンドガーデンの世界を旅しましょう!
サウンドガーデンとの出会い
サウンドガーデンは、私にとってグランジ四天王の中では最初に出会ったバンドで(同時期に四天王は全部聴いたけど)、当時は
ミュージシャンズ・ミュージシャン
の筆頭株みたいな存在でした。
なんか、クリス・コーネルとか“神”のような扱いにも見えましたよね。
それくらい色んなバンドがサウンドガーデンに一目置いていたというか、そのちょっと前までのレッチリ(3~4作目あたり)みたいな存在とでも言えば伝わりますかね?(レッチリは神格化されるとかいうのとはちょっと違うけど:笑)
だから気になってたんですよ。
「それを言うならニルヴァーナの方が凄いでしょ?」
って思われそうですが、意外と、ニルヴァーナは同時代のミュージシャン受けはあんまり良くなかった。
何でかな~?
あまりにも売れて人気者になっちゃったんで、
「ニルヴァーナが好きだ」
って言うと、ミーハーな感じが出ることを嫌ったのかな?
先輩としての嫉妬かな?
まだ、売れてない頃はフェイバリットに挙げて応援してたくせに、売れて調子ノッたことインタビューで喋りだすと
「なんだこいつ、生意気だな」
ってなったのかな?
ガ●ズ&ローゼズのア●セルっていう人みたいな(笑)。
とにかくニルヴァーナは褒められているイメージがなかったな~。
まあ、
当時私が愛読していた音楽雑誌が『BURRN!』だったことが原因
だったのかもしれません。
ほぼそのせいじゃねぇか。
『クロスビート』を読め。
めっちゃ神格化されてたから。
で、サウンドガーデンの話に戻ると、最初の出会いが大名盤で1000万枚以上のセールスを記録した『スーパーアンノウン』⇩
高校生の当時は、まず洋楽を聞いている友達もかなり少ないし、知っててニルヴァーナ、グリーン・デイ、オフスプリング、オアシスみたいな、そんな環境ですよ?
周りは皆、ロックの浅瀬でピチャピチャやってる程度の人たち(私も含め)。
ロックのディープな沼になんて誰も入ってません。
当然、こんなもん聴いてる高校生なんて周りにいないわけです。
私自身「?」となった状態で、
「皆はどう思うかな?」
と、これを友達たちに回してみても
「????よう分からん。悪くはないんだろうけど、良さも分からん。」
みたいな(笑)。
良いのかどうかが、さっっっっぱり分かんなかった。
あの分厚すぎるサウンドも、すごく『こもった感じ』に聞こえるし、やたらローファイで古臭い音にも感じたし。
「ヘヴィだし、バラエティ豊かなのは分かるけど、もうちょっとテンポの起伏はないのかよ?」
みたいな。
その後に聴くことになる、ニルヴァーナやアリスのほうが断然ハマりましたね。
それでも『スーパーアンノウン』はかなり聴き込みましたよ。
だって、他にやることないし、高校生の少ない小遣いでは手持ちのアルバムも少ないし(笑)。
もうね、こんなに聴き込んだのは私の人生でメタリカの『LOAD』の次くらいです。
つまり理解できない度合いが凄かったってことを伝えたい。
でも、どれだけ聴いてもツボらなかったんで、次のアルバムを買うのは大学に入ってから。
サウンドガーデンにはハマらなかった私も、この頃にはアリス他、’90年代ヘヴィ・ロック系のバンドたちにのめり込んでました。
ドロドロの世界は結構好きになってきた頃です。
で、次に買うのが2作目であり、メジャーデビュー作の『ラウダー・ザン・ラブ』⇩

2作目『ラウダー・ザン・ラブ』1989年
これがとにかく強烈にやばかった。
ドロドロと言っても、これは気持ちよく感じないドロドロだった(笑)。
もうとんでもなくダークでヘヴィなんだけど、やたらサイケだし、スペースロックっぽい妙な浮遊感まである上に、ジャズ的な要素まで入れてる。
『一筋縄ではいかない感じ』しかしない(笑)。
まさにシアトルシーンの奥底に居座っていた、一番やばい奴らが出てきたって感じ。
これに比べるとニルヴァーナもアリスもパール・ジャムも、大衆に聴かせるためにコマーシャライズされたものに聞こえましたね。
これ彼らのメジャーデビュー作だったはずだし、シアトル・シーンのバンドでは初のプロデビューなんですけどね(笑)。
「これインディの作品じゃないの?え?メジャーデビュー?…売る気ある?」
みたいな(笑)。
シアトルのボスとして先陣を切って出てきたんですけど、当然、こんな作風だから一般大衆に広がりはしなかっただろうな。
けど、感度の高い世界中の音楽ヘヴィリスナーたちの注目を集めるくらいには認知されました。
まあ、サウンドガーデンがまずメジャーに乗り込んで、アリスがゴールドディスクで風穴開けて、ニルヴァーナが大ブレイクでその風穴を大きく広げて、パール・ジャム他のバンドたちが続々とブレイクしていく…という一連の流れの中では、シアトル・バンド(グランジ)の最初の一撃だったわけですね。
けどね、この作風、毎日聞くのがしんどくなるほどダウナーなんですよ(ジャケは最高にかっこいいのに)。
ニルヴァーナが『ビートルズとブラック・サバスの結婚』、アリスが『鬱病のビートルズ』だと言われましたけど、サウンドガーデンのこの時の印象を例えるならば
『鬱病のブラック・サバス』
駄目じゃん。
もう死ぬしかないじゃねぇか。
もはや一つも救いがねぇ(笑)。
でも当時は私も病んでましたから、
「こういうのが分かるようにならないと駄目なんだ」
って思い込んでて、何回も何回も聴きましたよ。
朝から日がな一日、飯も食わずに焼酎一升瓶を空けながら、ヒゲボーボーでやつれて、こんなに暗い音楽にどっぷり漬かったわけです。
オマエ大丈夫か?なに?オマエ破滅したの?今から死ぬの?みたいな(笑)
思い返せば、あの日々はほぼ『修行』ですよ。
結局、その時はまったく良い印象を残さなかったですが、この修行がのちのち効いてくるんですね~。
皆さん、そろそろ
「おい、オマエ本当にこのバンドをおすすめしてんのか?」
って感じ始めたでしょう(笑)。
大丈夫です、ここからですから。
で、印象がずっと良くないサウンドガーデンがのイメージがガラッと変わるのが、次に買う3作目『バッドモーターフィンガー』⇩

3作目『バッドモーターフィンガー』1991年
これはおそらく彼らが残した作品の中では、
最高傑作に挙げられる作品ですね。
『グランジ/オルタナティブの名盤〇〇選』とかがあると、だいたいニルヴァーナ『ネヴァーマインド』に次いで2位とかにランクインしてます。
けれども『ネヴァーマインド』とはまったく真反対で、商業性は無視です。
デビュー2作目(通算3作目)、なんとほぼコマーシャライズしないまま、傑作を生み出しやがりました。
最終的にはダブルプラチナ(200万枚セールス)まで行きます。
こいつがとんでもない作品で、一発でサウンドガーデンに対する見方が変わりましたね。
「こいつら本気出したらこんなにすげぇのかよ…」
まあ、
前半5曲だけが異常にすばらしい
というかなり偏った作品なんですが(笑)。
ここでガツンとやられました。
私の中でサウンドガーデンがアリス、ニルヴァーナに並んだ瞬間でした。
当時はドラムの腕を磨くために(プロ目指していた)あらゆるドラミングをコピーしていたのですが、こっからはサウンドガーデン一色になりました。
で、そこからしばらくして『ラウダー・ザン・ラブ』に戻ると、これがめっちゃかっこよく聞こえるんだから、あら不思議(笑)。
『修行』はのちのち効いてくるものなんですよ。
まあ、一度ハマると不思議なもので、それまで理解できなかった音楽たちが体の隅々まで行き渡るではないですか!
で、その頃になると『スーパーアンノウン』も少しずつ良さが分かってきました。
ただ、ちょっと物足りなさがあって、「もう少しで痒いところに手が届きそうな感じ」というか。
しかし、ここで極めつけの作品と出会います。
最後に聴いた彼らの引退作『ダウン・オン・ジ・アップサイド』に出会って、サウンドガーデンが自分の中のランキングで一気に上位に浮上します⇩
これはえげつなかった…。
「ついに行き着くとこまで行き着きやがった…」
って感じで圧倒されましたね。
不意打ち的な感覚もありました。
だって、前作『スーパーアンノウン』ほど重要なアルバムという扱いはされていなかったから、“失敗作“くらいの先入観はありましたからね。
「え!?『スーパーアンノウン』よりこっちの方がすげぇじゃん!なんで騒がれてないの?」
って感じ。
奴らの全てが詰まってる集大成です。
『スーパーアンノウン』で物足りないと感じたものまで、完璧に補完されているというか。
全ての曲に打ちのめされる、まさにめくるめく『ロックスペクタクル』です。
世間の評価がありえないくらい低いけど、これ分かんない人は
「今までサウンドガーデンの何を聴いてきたの?」
って言いたいくらい、全てが詰まってる作品でした。
「そりゃ、これ出したら解散もするわ」
ってくらいの会心作でしょう。
当然、全曲コピーしましたよ。
以上…、
私のサウンドガーデンとの思い出でした…。
って待てよ!
今回の主題を忘れてねぇか?
デ・ビュー・さ・く!!!
というわけでここから本題に入りますね(笑)。
忘れた頃にやってきた怪作
アリスの回でも書きましたが、はっきり言って、グランジ/オルタナとか’90年代ヘヴィ・ロックとかっていうジャンルの音楽は、今から振り返ってみると
病みすぎてます。
あれは自分自身も病んでいたからこそ聴けた音楽というか、それが当たり前だった時代だからこそ聴けた音楽というか。
だんだん、時代が変わり、自分も大人になっていくと、あの病んだ音楽は聞けなくなってきます。
ほんとに手が伸びないんですよ。
あの頃に夢中になって聴いた
パンテラ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、コーン、マリリン・マンソン、ナイン・インチ・ネイルズ、ミニストリー、マシーン・ヘッド、、セパルトゥラ、ソニック・ユース、ダイナソーJr.、L7、マッドハニー、
そしてサウンドガーデン…。
やっぱり社会人になると忙しさだとか、色んなストレスに晒されるから、疲れ果ててるんですよね。
家に帰ると、とりあえず酒飲んで休みたい。
集中力を要する映画とか、難解な小説が受け付けなくなるのと同じように、
聴くのにエネルギーを要する音楽なんて聴けなくなるんです。
AKBとか聴いてるほうがラクなんですよ(笑)。
『秘密のケンミンショウ』とかのバラエティをボーっと見ながら酒を飲む毎日。
皆さんもそんな時期ありませんでした?30代の頃とか。
そんな中、聞く音楽としては、’90年代ではやっぱり『ビートルズ』という形容詞が付いた2つのバンドだけが、『たまに聞きたくなるバンド』として残りました。
『ビートルズとブラック・サバスの結婚』と呼ばれたニルヴァーナと、
『鬱病のビートルズ』と呼ばれたアリス・イン・チェインズ。
この2バンドだけは、暗いのに、ダークなのに、ずっと聴けたんですね。
時代を飛び越えるメロディがあったんだと思います。
で、40代になると、それまではシャカリキになって頑張っていたことが虚しいことだと感じる瞬間が増えます。
「仕事だけが人生じゃないんだし。これからは仕事はほどほどに、夢中になれるものを徹底的にやろう」
そうして、体力的にも精神的にも余裕が出てきだした時に、ふと音楽に興味を戻すと、『ストリーミング』なる便利なものが発明されてる(笑)。
で、久々に音楽にどっぷり夢中になっていくわけです。
その時になって、私の頭に久々にサウンドガーデンが思い出されるわけです。
やっぱり、私の青春時代に「一番聴きこんだ!」って言えるのはサウンドガーデンだったんですよ。
私にとっては難解だった分、一番聞きこんだし、一番耳コピもしたし。
特に思い入れがあったバンドなんで、ある時
「そういや、サウンドガーデン聞かなくなってたな?」
そう感じ、スポティファイでサウンドガーデンのアルバム一覧を見た時に、ふと、思い出したことがありました。
1stアルバム忘れてたくね!?
それ、ブラック・サバスの時と一緒!(笑)⇩
夢中になって聴いていた時代には、なぜか存在を忘れちゃってたアルバムを思い出すパターン。
っていうか、ストリーミングの時代で便利なのが、サウンドガーデン⇨アルバムと入っていくと、そこには全部のアルバムが時系列順に並んでるから、自分が聞き逃していたアルバムもすぐに分かるんですよね。
「そういえば、1作目ってインディ盤だから、きっと音が良くないと思って聴かなかったんだよな」
と、当時を思い出しました。
『ウルトラメガOK』楽曲解説
で、聴いてみるとこれが
すごくおもしろい!
アンダーグラウンド、インディだからこその良さが全て詰まってます。
もう、がむしゃら。
けど、当時のシアトルインディ勢の中ではやっぱり演奏技術がピカイチ。
クリス・コーネルの声がかなりパンク寄りで、知らないで聴いたらサウンドガーデンとは分からないかも。
予想通り、かなり暗い作風でアングラ感満載なのですが、この頃からどう聴いてもサウンドガーデンの音楽。
で、めちゃめちゃエネルギッシュ。
気になっていた音質もリマスターされてるので、音の悪さが意外にも気にならなかったんですよ。
そして初期サウンドガーデンのスピード感だったり、スリリングなリフだったり、変則的なリズムだったりはこの頃からあります。
と、言うより、この頃の方がかえって凄みを感じます。
ライブハウスシーンのヒリヒリするような緊張感をそのままパッケージングしているような。
相変わらず、“よく分からない“魅力ではありますが(笑)。
それでは長くなってきたので、手短に収録曲のレビューいってみましょう。
#1『Flower』
初っ端のイントロからまさにサウンドガーデンなんですよね~。
このオリエンタルというかエキゾチックな響きときたらどうでしょう。
こんなものをロックというカテゴリーに持ってくるという発想が、最初っからレッド・ツェッペリン的というか、彼らにいかに心酔しているかが伝わってくるというか。
ワールドミュージック的な感性をもってくるんですよね(ZEPもアイリッシュ民謡とかインド関係の音楽取り入れてた)。
こういうのって、バンドが一回売れて、『新しい音楽性の模索』とかやり始めて、成熟してきて、そこで初めて出てくる引き出しだと思うんですが、それが最初からあるっていうのは…やっぱり一癖も二癖もある奴らです(笑)。
「この前インドの音楽聴いてみたらめっちゃインスピレーション受けたから、ちょっと試しにモチーフとして取り入れてみよう」
とかいうレベルじゃないんですよね。
血となり肉となっているくらいものにしているというか。
で、この頃の彼らのリフは、コードが非常にグランジ的ですね。
マッドハニーとかに通じるいわゆる典型的な『グランジのコード』を弾いてますね。
パンキッシュなんですよね。
でも、ヘヴィでうねってて、頭を振りたくなってくるグルーヴ。
わりとガリガリと強引な感じに“若さ“を感じます。
クリス・コーネルのボーカルも、まだこの頃はノリがパンクなんですよ。
『本格派ボーカル』って感じでハイトーンと伸びを聴かせるわけではなく、わりと『わちゃわちゃ』歌ってるというか。
#2『All Your Lies』
これまた不穏でやたら焦燥感を駆り立てる始まり方をします。
このスピード感がたまりません。
ギターの響きがブラックサバスだな~。
#3『665』
ほ~ら、やっぱりヤバいの出てきた(笑)。
ひたすらギターのノイズと民族舞踊のような打楽器…。
不気味すぎ。
こういうことやってたのが、シアトルシーンの音質というか、本当の核の部分というか。
#4『Beyond the Wheel』
これこそ『鬱病のブラック・サバス』ですよ。
どこまでも重く、地獄の底まで落ちてしまうんじゃないかというくらい。
それに乗っかるボーカルは意味分かんないくらいハイトーン。
このあたりの作風は間違いなく次作『ラウダー・ザン・ラブ』に引き継がれますね。
#5『667』
なんだよ665とか667とか意味不明。
ん?確か『666』が悪魔の数字だから、その前後のナンバーということか?
・・・・・・・
いや、だとしても意味不明(笑)
#6『Mood for Trouble』
イントロのスピード感あるアコギのカッティングに胸が熱くなりますね。
後に彼らはあんまり演らないハイハットの16ビート刻みになってて、これはレアですね。
やっぱり初期のサウンドガーデンは『速さ』にこだわってる感じがすごく強い。
それだけに『Beyond the Wheel』のようなスローでヘヴィなナンバーの『重さ』が際立つのでしょう。
#7『Circle of Power』
出た!
まさにサウンドガーデン。
もう、サウンドガーデン丸出しですがな(笑)。
この混沌とした超絶スピード感がたまりません。
カオスなまでのリフの洪水。
全開ですな。
このリフってなんかメタル的に聞こえなくて、スペーシーというか近未来的な雰囲気が出ているというか。
かと思えば、ちょっとベンチャーズ、ビーチボーイズなんかのサーフロックがルーツなのかもとか感じたり。
けれども、サウンドガーデンが誰にも似ていなくて、一筋縄ではいかないのがその『グルーヴ感』。
ドラムのマット・キャメロンの存在あってこそだと思います。
彼が叩くだけで、若手バンドではなく、ベテランバンドの風格が漂うのは凄い。
レッド・ツェッペリンがジョン・ボーナムなしでは存在し得なかったように、サウンドガーデンもマット・キャメロンなくしてあり得ないというか。
この人が叩くだけでサウンドガーデンになります。
クリスのソロ作品を聴いた後だと、特にそう感じますね。
ヤバい…またスタジオ入りたくなってきた(笑)。
#8『He Didn’t』
変則的なリズムが病みつきになりそうです。
しかし、いきなりジャズ的な展開になりビックリ。
ブラック・サバスがギターソロではジャム・セッションのようにテンポアップしてたのを思い出します。
引き出し多いな~。
#9『Smokestack Lightnig』
ハウリン・ウルフというシカゴブルースの巨匠をカヴァーしてます。
よくこんなもん、カヴァーしようと思ったな(笑)。
まったくの別物になってます。
けど、ファンキーなギターやらブラック・サバスやらも混ざってて、なんか混沌としてます。
#9『Nazi Driver』
「NAZI」は「ナチ」つまり「ナチス」のことを指します。
ナチスってこう書くんですね、知らんかった(笑)。
もうマット・キャメロンのための曲ですね。
よくこれだけの手数をブレなくタイトに決めれるものです。
超かっこいい。
このスピード感をマットとともに引っ張ってるのはベースのヒロ・ヤマモト。
日系人であり、まんま日本人の大学生みたいなのがメンバー写真に写ってるからびっくりしますよ。
1984年結成時からのオリジナルメンバーで、次作『ラウダー・ザン・ラブ』までは、彼のベースです。
もしかして、サウンドガーデンにやたらとオリエンタルな響きが感じられるのは彼が持ち込んだ要素なのかな?
#10『Head Injury』
またしてもパンク色の強いナンバーです。
この頃のクリスの歌い方はまだ固まっていないからこそ、自由で魅力的です。
『スーパーアンノウン』~オーディオスレイブ~ソロ作と、あんまり歌い方に起伏がなくなっていく印象があるんですよね。
#11『Incessant Mace』
多分、多分の話なんですが、もしかしてこれは彼らなりにブルースをやろうとしているんだと思われます。
酒飲んでいるかのようにダラダラと、まったりと進行していきます。
方法論こそブルースとは違うんですが、表現しようとしている雰囲気が一緒の匂いとでも言いましょうか。
妙にクリームっぽさを感じるんですよね。
#12『One Minute of Silence』
いや、無音やないか~い!
マジで?
マジでこれで終わるの?
グダグダ感が半端ないのですが(笑)。
サウンドガーデンはスルメの中のスルメバンド
いや~…これこそサウンドガーデンだ。
これ聞き出してから、そこから更に聴き出すと分かってくる『ラウダー・ザン・ラブ』の凄み!
これには驚いた。
けど、実は本作はその
『ラウダー・ザン・ラブ』より売れてます。
あれよりはとっつきやすいですからね。
なんかこんな感覚って久々だ。
売れることとかに全く関係なく、自分のすべてを掛けて自己表現している奴らがいて、それをどうにかこうにか理解しようと必死に聴きまくる私がいる。
音楽はこれが面白いんですよ!
分からないなりに聴き込んでいると、ある瞬間で快感に変わる。
そしてその瞬間って自分の感性が変わった瞬間でもあるし、それまでのこだわりとか先入観を脱ぎ捨てた瞬間でもあり、自分が何か生まれ変わったような気にさせてくれる。
これこれ。
こういう気分にさせてくれるバンドこそ、サウンドガーデンだったんだ、と。
今回、久々にサウンドガーデンを聴いたことで、さらにディープな音楽リスナーになりそうです。
っていうか、こいつら聴いていると、ドラマーとしての血がたぎってきて、スタジオに入りたくてウズウズしてます(笑)。
感謝ですよ、もう。
この『ウルトラメガOK』は私の人生のこのタイミングまで、出会うことを待っててくれたんだな、と。
これって、’70年代の音楽におけるZEPとかサバスみたいな存在だと思うんですよね。
イエスやキングクリムゾンかもしれません。
かなりディープに音楽に入りこんだリスナーだけが、その本当の良さにたどり着くというか。
ターンテーブル、あるいはCDラジカセの前に座って「まんじりともせず」に音楽を聴いていた時代とは違い、今はスマホ片手に「ながら」で音楽を聞く時代なので、現代の音楽の聴き方にはまったくそぐわないバンドだとは思います。
けれども、あなたが『ディープな世界の行き着く果て』を見たいのであれば、サウンドガーデンはおすすめします。
こんなこと書くとすごくビギナーにはハードルが高くなると思うのですが、サウンドガーデンはそういうものだと思ってください。
ちなみにグランジ四天王と呼ばれる4バンドの中では日本で一番人気がなかった印象です。
来日しても結構ガラガラみたいな(笑)。
こんなプレゼンで聞こうと思うやつはよっぽどの猛者(もさ)だな。
それではまた!